2004/08

南アルプス

北岳

今年はお金が無かったり、仕事始めたら休みが取り難かったりと、
山に行くにはちょっと適さない年のようだ。
1月に日帰りハイキングをやったっきり、もう半年も歩いていない。
何かとあまり遊ぶ気分になれない日々が続いていたが、
気がつくともう夏山最盛期に入ろうかとしている頃だった。

例年なら試験勉強の為に山行きを止めていた隊長が、
何やら今年はえらく山に行きたがっているようで、3年振り、
且つ夏山最盛期ということもあって、どっかの山に出かけようかという話になった。

お互いに山離れ状態なので、あまりハードな山は見送って少し楽な山にしようかと
最初のうちは言っていたが、やはり久しぶりだし、
高い山に行きたいという誘惑に負けて、今回は近めの南アルプス北岳に行くことになった。

08/05 (木)  千葉 → 新宿 → 中央道 → 芦安
08/06 (金)  芦安 → 広河原 → 大樺沢 → 八本歯ノコル → 北岳山荘泊
08/07 (土)  北岳山荘 → 北岳 → 二俣コース → 広河原 → 中央道 → 千葉

08月 05日 (木)     曇り 時々 晴れ

この日は仕事で少し疲れた感じがあったが、40分ほど遅れて自宅を出発する。
遊びの為に首都高速を走るなんて、かなり久しぶりで新鮮な感じだ。

一昔前までこんなのを当たり前のようにやっていたのかと考えると、
それなりに幸せな日々だったのだなあと思う。
なんせ今の職場は連休が取り難いという、
縦走登山者にとっては、何とも不幸な環境だからだ。

昨年までの職場では、3〜4連休が比較的取り易く、且つ天候を見ながら
2〜3日前に休みをずらすことがまあまあ可能という、
登山者にとっては何とも贅沢な環境だったのだから、この落差は非常に大きい。
( 冗談ではなく、本当に笑えない話である )

しかし前日に知ったことだが、利点もあった。
旅行に行くと、二泊までは福利厚生費で援助金が出るのだそうだ。

このこと自体は悪い話ではないのだが、個人がプライベートで遊びに出かけるのは
個人の勝手なのだから、何もそんな項目で金はいらんから、そんなことより、
金を出す義務のある時間外手当を正当に支払ってもらいたいものだ。

私の性格からして、金額の帳尻が合うから良いだろとか、( 全然合ってない!! )
そういう問題ではなく、筋道通りに正しいことを正しくやれば、
それで良いではないか−、 ということなのだ。   変か?

で話は戻って、21時10分頃、
江戸橋付近で渋滞中に隊長から新宿駅に着いたという連絡が入った。
こちらの渋滞は池袋線の影響のものなので、
5号線との分岐を過ぎると、どんどん車は流れるようになった。

10分ほどで新宿に到着し、西口で無事隊長と合流。
相変わらずの迷彩ルックで、ちょっと懐かしい。
再び首都高速から中央道へと、車は一路山へ向かって走る。

事前の予定では、合流してからいっしょに晩飯を
食べることになっていたにもかかわらず、腹が減った−と言うと、
なんと自分だけ空腹に負けて飯を食ってきたと言う。 ( なんちゅうやっちゃ! )
この時一瞬、隊長の瞳がさとう珠緒のような
かわいい瞳で訴えているように見えたが・・・・・  がしかし。

いくら隊長の瞳が可愛くても、これでは軍法会議の対象じゃあ〜!

食事の為に談合坂SAへ入るが、休前日でない為か、わりと空いていた。
天気予報では、初日は晴れるものの全国的に雲が多めの天気だと言っていたが、
中央道を走りながら空を見ると、そこそこ星は出ており、
何となくこの感じなら明日は良い天気になりそうな気配だった。

北アルプスの時は中央道を松本まで走るが、
南アルプスの時は甲府昭和で降りるので、やはり近い!

下に降りると、先でコンビニが無くなるということで、しばらくしてセブンイレブンに入る。
行動食や朝飯などを買った際に、今やっているクジを引いたら、珍しく当たりが出た。
ちょうど持って来てなかった、シャンプーリンスセットだったので、ラッキーだった。
( でもまあ下山後の温泉施設には、大概そういうのはあるんだけどねえ〜 )

南アルプス林道は、強い雨が降ると通行止めになることがあるので
ちょっと心配していたが、とくにゲートが降りていることもなく、
林道を走って行くことができた。

広河原へは、2年ほど前の崩落災害で車の通行が出来なくなっていたが、
今年の夏から一部再開となった。
しかし夜叉神から先は一般車両は規制され、
バスかタクシー、関係車両だけが通行可となっている。

午前零時過ぎ頃、無事に芦安の駐車場を見つけ、
その後早朝のバスの時間までの間、お休みとなった。

08月 06日 (金)     晴れ 後ち 曇り 時々 小雨

目が覚めると4時半頃で、外はもう明るい。
乗る予定のバスは5時半頃なので、
しばらくウツラウツラした後、準備をしてバス停に向かう。

バス乗り場は駐車場のすぐ上で、歩いても1分程度と近く、楽だ。
バスが出発する時、ふと正面を見ると、南アルプス温泉ロッジがあった。
ダンディ先生が以前、お奨めされていた宿ってここかあ〜、と思い出した。

バスが夜叉神へ向かって走り出すと、
眩しい朝日が射し込み、周辺の緑が瑞々しく輝いている。
しばらくは久しぶりの南アルプス林道を眺めていたが、
そのうち少し眠ってしまったようであまり記憶が無い。

広河原に到着してバスを降りると、涼しい空気が辺り一杯に広がっている。
しかも雲の無い青い空が上空一面に広がっていた。
鳳凰三山の方には既に積乱雲の卵のような雲が見えていたが、
南側の北岳方面には雲の姿はかけらも無かった。

しかし素晴らしい青空を見ているにも拘らず、何故か素直に喜べなかった・・・
それは何故か。

天気予報で東日本から西日本にかけて雷雨の予報が出ていることと、
朝の時間はすっきりした青空でも10時頃からガスが沸き出し、
昼過ぎ頃には雷雨となった白馬岳のことが妙に頭に浮かんだからだ。

また以前、甲斐駒ヶ岳に登頂した時、9時頃に白峰三山に全く雲が無かったにも拘らず、
30分ほど後にはすっかり北岳付近にガスが沸いて
何も見えなくなった記憶があったからというのもあった。
ということで、素晴らしい青空の割には今日はあまり期待してない自分がそこにはいた。

アルペンプラザの前のベンチで朝食を摂りながら準備を始める。
隊長の準備が少し遅れていたので、
その間ベンチに座って待っていると、晴れているのに寒くなってくる。

まだ陽が当たっていないこともあるが、基本的に標高が高いので涼しいのだ。
下界はあんなに暑いのにねえ・・・ と、しみじみ思う。 ( しかし真面目に寒かった! )

最初の橋の所で北岳を眺めながら隊長を待つが、なかなか来ない。
今日は隊長の行動に少し時間が必要なようだ。

橋を渡り、7時半過ぎに広河原山荘の前を歩き出し、
いよいよ北岳に向かって歩み始める。

広河原より北岳

しばらくは完全に樹林帯の中なので、
陽射しが無く、涼しい歩きが続く。

出発した時間がちょっと遅めだったせいか、他の登山者の姿は見当たらない。
そのうち樹林の中でも少し開けた場所に出ると、白根御池小屋と大樺沢との分岐だ。

ここの分岐を通る度に、たぶんここを白根御池小屋方面へ進むことは
今後も無いだろうなあと、いつも思う。

分岐を過ぎると、大樺沢のすぐ傍を歩くようになり、
沢の音も手伝って、気分的にも爽やかさが増す。

3年振りの山歩き&初の3000m超えの期待感から、
隊長の口からは山は良いよね−が連発される。

沢の所でちょっと開けた部分があったので、
休憩を兼ねて沢の写真を撮る為、ザックを降ろす。

沢沿いで休息

沢の流れを流れるように撮る為にはスローシャッターで撮る必要があるが、
樹林の中は暗くてちょうど良い。
三脚を併用している者だけに与えられる特権的な撮影の一つだ。

リラックスしたムードの最中、一瞬、えっ−!? と思う事態が発生。
三度の飯より大事にしている軍用品の一つである軍用水筒を、
隊長が沢に落としてしまったのだ。   一瞬、二人して呆然・・・
しばし爽やかな沢の流れに乗って、桃太郎の桃のようにドンブラコと流れ行く水筒・・・

しかし奇跡は起きた。
3mほど流れた後、運良く大きな岩の所で止まったのだ。
無事水筒は救出されたものの、
もしあのまま水筒が流れていってしまったら、果たして登山はどうなっただろう。

スタートから1時間程度の地点なので今回はそれでも十分戻れるが、
これがもし長いコースの途中で、且つ途中で水の補給場所が無いコースだったとすると、
真面目に考えてちょっと危険なことだ。
ちょっとどうかすると、実は危険な事なんて山にはたくさん転がっているものだ。
( でも本当にすぐ水筒が戻ってきて良かったねえ−! 笑 )

ここでは二人して同じような構図の写真を撮ったので、
広角レンズの違いを隊長に見せてあげた。

今回は二人とも、同じようなレンズを使っているが、
私のは24〜200mmで、隊長のが28〜200mm。
望遠側は共に200mmで同じだが、広角側に4mmの違いがある。
しかし広角側は数ミリの違いが、実はかなり大きい。
24mmの画角でファインダーの中を覗いた隊長も納得していたようだった。

しかし200mmは200mmで、山でもそれなりにあると便利なものだ。
ずっと24〜85mmのレンズで山を歩いて撮影してきたが、
やはり望遠側もほしいと思い、昨年やっと200mmまでのレンズを買ったのだ。
ちょっと遠い山を大きく撮りたい時や、高山植物を近くから撮る時など、
やはりあると便利だね〜

休憩を終えて、沢沿いに歩き出す。
この辺りの歩きで、マイナスイオンをたくさん吸収できるだろうか。
ところどころ、あ〜こんな所があったなあ〜などと、以前歩いた時のことを思い出す。
早く樹林帯を抜けて大樺沢二俣に出ないかな〜と思う反面、
今は樹林帯の中だから涼しいけど、
抜けると暑いだろうなあ・・・ などとも思ってしまう。

樹林帯が少し切れた所で、向こうの方に
これから進んで行く八本歯への登り斜面が見えている。

おそらく午前10時頃にはガスが稜線にかかってくるだろうと予想していたので、
空が青いうちに記念写真を撮っておこうと思い、
少し休憩することにして写真撮影タイムとした。

隊長が三脚を立てカメラをいじりだす。
記念写真の構図を設定する為に適当な所に立ってくれと言うので
少し離れた場所で立っていると、セルフタイマーをセットしている様子。

しばらくして撮影を始めたらしく、
隊長がこっちへ向かって走り出した直後に、またしてもハプニングが発生!!
こっちに向かって走っている途中で、なんとコケてしまった!
( 実は緻密に計算された演出だろうか・・・ )

すぐに立ち上がっていっしょに記念写真に写ったので、
残念ながらコケた瞬間の笑える画像は無い。( 笑 )
どうやら今回は肩を脱臼せずに済んだようで幸いな話だ。
( な〜んてそんな大げさな転びじゃない )

白山風露 ( ハクサンフウロ )

しばらく歩くと右側が崩落地と
なっている斜面の所に出た。

あ−確かにこんな所があったと思いながら、沢にかかった木道を渡り、右岸を進む。
登山道はわりと狭いのだが、すれ違う人が少ないので、全然問題無し。
う〜ん・・・ 涸沢とは違う。

少し登ると再び左岸へ渡る木道の所に出る。
ここは少し広くなっていてちょっとした休憩場所になっている。

今回は8月だし、今年は猛暑ということもあって、
当然沢の流れは少ないが、昔6月に来た時は雪解けの為に
沢の水量が多かったので、凄く気持ちの良い場所だったことを思い出した。

沢の中に手を入れてみると、思ったよりは冷たくないが、
ほど良い水温でしばらく浸けていられる。

昔、仙丈ケ岳に登る途中の藪沢で、同じように手を沢に入れた時、
あまりに冷たすぎて何度やっても3秒もたなかった。
登山ではなさそうな人たちが、ちょっと水遊びをしていたが、こういう場所で
ゆっくり水遊びをしながら過ごすのも、のんびりしていて良いものかもしれない。

ふとスナップ写真でも撮ろうかとすると、
隊長が頭を沢の水で冷やしていた。
で結局、左のような山賊風味の写真になった。

アルカイーダ、日本に潜入!

本当に銃を出しそうだから笑える。
しかし住処には本当に銃があるらしい。
銃刀法違反のような気もするが・・・
あ、隊長の住処は治外法権だったっけ?

再び沢の左岸を歩く。
すぐに八本歯まで見渡せる二俣の下の所に出るかと思っていたが、意外に長い。
少し樹林帯が開けてきたような感じがしてしばらく進むと、
ようやく二俣の下の方の、先が見通せる場所に出た。

6月に来た時の印象が強いので、
雪渓の所からずっと広く見通せるイメージを持っていたが、8月で緑が多くなったせいか、
少し沢部分が狭くなり、樹林部分が増えて見通しが狭くなったような気がした。

本当の二俣の分岐点はもう少し先の方で、休息を取っている人たちの姿がたくさん見える。
私たちもしばらく休んだが、少し大きな岩の上に立つと、
沢の下流の方から実に爽やかな涼風が吹いてくる。

心地良いというのは、まさにこのことだあああ−!! と
叫びたくなるぐらいの気持ち良さなのだ。
隊長とも意見が一致したが、自然の涼風というのは
エアコンと違って、どうしてこうも体に優しいのだろう・・・・・

人工的に冷やしている冷房は、長時間浴びていると、あちこちが痛くなってくるが、
自然の風はいくら吹かれていても、一向に体に異変を感じない。
やはり自然は良い!!!

二俣の分岐を通り過ぎる頃には、
すっかり正面に見える北岳の稜線はどんよりとした暗雲に包まれていた。
八本歯の稜線付近はまだマシな明るめの灰色の雲の中だが、
北岳付近の稜線は完全に怪しい雲なのだ。
どう見ても稜線上は雨だよと言われてもおかしくないような雰囲気だ。

二人して言う。  あの中にこれから登って行くの、嫌だよね・・・・・
それにしても朝のあの青空とは大違いだ。
後ろを振り返ると鳳凰三山が見えるが、あちらの方はまだマシなようだ。

稜線にガスがかかっている部分もあるけれど、ガスがかかったり取れたりを繰り返している。
北岳の方は一切ガスが取れることはないらしい。

二俣を過ぎると、だんだん傾斜がきつくなり、歩く速度も遅くなり始める。
それにしても今日の隊長の歩行速度は、いつもより遅いように感じる。
・・・・・沢沿い歩きの時からだけど。  やはり3年のブランクは大きいらしい。
でも隊長っていつも運動して、体鍛えているはずだけどねえ〜

八本歯に向かって左俣コースを登って行くと、
登山道は岩場ルートに変わり、ちょっと先には雪渓が見える。
もう8月だから基本的に雪渓は少ないのだが、
今年の夏は暑かったせいか、より少なくなっているようだ。

左俣コースの中腹ぐらいまで登ってくると、
いよいよもってガスが目前に迫ってきて、景色が無くなってくる・・・・・
岩場コースの最後の方ともなると、隊長の歩行速度が更に遅くなり、
間が開くことが多くなってきた。

肩の脱臼以来、若干不安があるようで、
今回は荷物を減らしたものの、それでも15Kgほどはあるらしい。
何でも、ついついやり過ぎることが多いらしいのだが、
結局は 『 過積載だよね− 』 ということになった。

昔の人はよく言ったものだ。

『 過ぎたるは及ばざるが如し 』

岩場歩きが終わり、普通の山道に入る頃には、
私たちもとうとうホワイトアウトの中に入ってしまった。

急な登りを進むと、最初の梯子の手前で
ちょっとした休憩場所のような所に出る。 ( といっても狭い! )

すこし止まって休んでいると、その辺の人たちの会話が聞こえるので、
何気なく聞いていると、昨日はずっと雨で、終日合羽を着ていたそうだ。
でもそのおかげで今朝は素晴らしい景色が山頂から望めたのだろう。

私たちは初日が雨だったら、どうしていただろう・・・
二人して同じ答え、せーのドン!

『 登山止めて、温泉に行っている 』

最近はすっかりグウタラなのさ〜〜〜

といっても仕方ない部分もある。
二人して良い写真が撮りたいという目的が大きい為、
雨が降っているとか、ガスで何も見えないとか、
そういう写真が撮れない状況では、意味が半減してしまうのだ。

悪天候でもピークが踏めれば良い、という目的で
山へ行ってるわけではないので、その辺は仕方がない。

ガスの中を先へ進む。
右側にはバットレスが見える筈だが、うっすらと半分程が霞んで見える程度だ。
少し進むと木の梯子がだんだん姿を現すようになってくる。

梯子が設置してあるぐらいだから、
傾斜が急でも別に不思議ではないのだが、
上から下を見下ろすと、とんでもない急斜面じゃないか・・・・・

涸沢から北穂へ登る時もわりと急傾斜かなあ〜などと思ったりもしたが、
なんかこっちの方が急に思える。

前回ここを歩いた時は、既にこの辺の梯子付近では、
ゼ−ゼ−ハ−ハ−のバテバテ状態だったが、
今回は半年振りの山歩きの割にはそんなにきつくない。  何でかな?

そのうち何やらポツッと冷たいものを顔に感じる・・・  げっ、とうとう来たか・・・
一気に降り出すと困るので、とりあえず三脚を収納し、レインスーツの下だけを穿く。
すぐに降り出すかと思ったが、この時はこのまま収まってしまい、どうやら止んだようだ。

急傾斜の梯子がどんどん姿を現し、あっという間に高度を稼いでいく。
八本歯の稜線はすぐそこに見えるんだけどなあ〜、と思いつつ
進んでいると、ようやく分岐らしい光景が・・・

もう少し近づくと、明らかに道標が立っているのが見えた。
ようやく八本歯ノコルに到着だ。

ここまで来ると反対側の北岳山荘方面や間ノ岳などが見えるのだが、
あいにく今日はガスで殆ど見えない。
少し休んだ後、あまり時間を取らずに先へ歩き出す。
予定より少し時間を押しているのだ。

しばらく先に長めの梯子が見えており、そこを通過してちょっと行くと、
北岳山頂と山荘トラバース道の分岐かと思っていたが、これが意外に長かった。
途中で、もしかして分岐を見過ごし、山頂へ向かっているのだろうかと不安になってしまう。
更には上空で雷まで鳴り出してしまった。   この辺りでは他の登山者といっしょに進む。

ゴツゴツした岩場を登っていくと分岐点に到着し、
時折り晴れるガスの向こうに北岳山荘が小さく見えた。

上空にはうっすらと青空が覗いている部分もあり、また時折り太陽が輪郭だけを
ぼんやりと見せてもくれるが、相変わらず自分たちのいる所は基本的にガスの中である。
そのうち、とうとう本格的に雨になった。

さっさとレインスーツを着込み、山荘へのトラバース道へと入っていく。
ここからは小さなアップダウンはあっても、あまり大きな標高の変化は無い。
しかし細くて滑りやすく、たまに鎖場などもあって、気楽な歩きという感じでもない。
ちょっと間違えて左側に転倒すると、結構危ない感じで落ちていきそうな雰囲気だ。
けれど、高山植物が豊富なコースなので、花の種類はたくさん目にすることが出来る。
いろんな種類の花がたくさん咲いていたが、わりと印象に残っているのは鳥兜ぐらいかな〜

北岳からの下りのルートが近づいてくる頃になると、
先の方にようやく北岳山荘がはっきり見えてきた。
しばらく歩いて山荘に到着すると、以前来た時には無かった施設が2棟ほど出来ている。
片方は大きなバイオトイレの施設で、もう片方は診療所かなんかだったと思う。

おかげで山荘の玄関前の広場は無くなり、
狭い窮屈な感じの空き地ってな感じに変わっていた。

到着時間が16時前頃の時間だったので、
結構混雑しているかと思ったら、そうでもなかったのだが、
最盛期の週末に絡む曜日の為、それなりの混み方らしい。
受け付けをすると夕食は18時半だった。

私たちが受け付けをしている時に、傍でなにやらトラブルが起きているようだった。
どうやら途中に荷物を置いて空身で山頂に行った人たちが、
戻ってくるとザックが無くなっていたらしい。

山行の途中で荷物が無くなったら、かなり困るとは思うが、
しかし他人の荷物を盗む人なんているのだろうか?
私たちの間では、それはきっと盗まれたのではなく、遭難か何かと間違われて、
親切な人がどこぞの小屋に持って行ってくれたのではないか、と話していた。

部屋に行って荷物を置き、周囲を見ると、どうやら今日は1枚の布団に2人のようだ。
やっぱり受け付けで言われた通りかあ・・・  そりゃそうだろ。

しかし最近は1枚の布団に2人で寝るというのは久しく記憶が無いが、どれくらい振りだろう?
記憶があるのは、確か久保田先生と餓鬼岳に行った時、
キツキツだったのは覚えているが、それ以来かな。

とりあえず、部屋に居ても落ち着く雰囲気ではないので、
ビールを飲もうと思い、外に出た。

山荘の前の斜面を少し上がると、
反対側( 仙丈ケ岳側 )が見える筈なのだが、ガスで殆ど見えなかった。

しばらく待っていると隊長がやってきたので、とりあえずビールを飲む。
しかし普段の爽快感はあまり無く、妙な感じだ。
ちょっと疲れていたからかもしれない。

夕方、周囲のガスは取れないが、上空だけは少し青空が顔を出していた。
明日の天気はどうだろうねえ〜
明日の朝が良い天気なら、まあ今日は良い天気でなくてもいいのだけど・・・

そのうち少し寒くなり、部屋に戻る。
ちょっと窮屈感はあったが、よく見ると何やら2階というか
屋根裏部屋的なスペースが上にあるではないか。

上がってみると、4〜5人程は十分寝られる程のスペースがある。
とりあえず、ここでしばらく横になることにした。
もう17時過ぎているし、このまま客が来なければ、なにも狭い下のスペースで
寝なくても、ここを使えば少しは楽になるじゃないかあ〜、と考える。
しかし、しばらくうたた寝していたら、案の定後から客が組み込まれてきた。

結局全部で16人となり、客同士で調整した結果、
まあまあのスペースを皆さん確保できる感じになった。
私たちは上のスペースで一人一枚の布団となり、めでたしめでたし。
決して、隊長殿が銃を向けて、
スペースをよこさないと撃つ、などと脅したわけではない。

私たちの夕食時間となり、下に降りていくと、受け付けの所で
さっきのザック紛失の人たちが、何やらゴチャゴチャやっている。
どうやら無事にザックが見つかったらしい。  まあ良かったねえ〜

しかし基本的には、所持品を勝手に放り出して離れたのだから、
その後どうなっても文句は言えない筈だ。
楽をする為に置いていくのは勝手だけど、
そのリスクが伴うこともきちんと考えた上で行動すべし、なのでは?

夕食の席では隊長はよく食っていた。
あっちのビツこっちのビツと、よくおかわりをしている。
どうやら今日の調子の無さは、若干シャリバテ気味というのもあったようだ。

食べ終わる頃、翌朝の時間をどうするかを考える。
晴れれば南側から北岳を撮った方が良いというのは、
意見が一致していた為、山荘の前で明るくなるまで待つかが未定だった。

しかしガスで見えなければ、単に時間の無駄となってしまう。
結局、明日は4時頃起きて4時半頃出れば、日の出が5時頃なので
山頂への途中で日の出が見られるだろうから、
それでいいかあ〜、ということに落ち着くのだった。

寝る前にトイレに行こうとしたが、
室内のトイレは混んでいたので、外のバイオトイレに行ってみた。

半分故障中だったせいか、結構臭いがきつくて、
長時間は居られないなあというのが、率直な感想だ。
でも故障してない方はわりとそうでもないので、直れば問題はなさそうだ。

布団に戻ると、今日はどちらかというと静かな夜といえそうな感じだった。
必ずといっていいほど、イビキがうるさいオヤジがいることが多いので、
今日は恵まれた方だろう。

隊長はイビキをかくらしく、寝る前に鼻にイビキ防止装置をつけていた。
どうやら他人がイビキをかくと、
そこにミサイルが飛んでいくというような物騒なものではなかったようだ。

今日は久しぶりでちょっと疲れたせいか、わりと山中にしては眠れた方だった。
23時半頃に一度目を覚ましただけで、その後目を覚ましたら、もう3時半頃だったのだ。

いつもこれぐらい眠れると良いんだけど、
私の場合はなかなかそう上手くはいってくれないようである。

08月 07日 (土)     晴れ 後ち 曇り 後ち 雨

4時頃になると、周囲の人たちも起きる人が多くなった。

私たちは朝食を弁当にして早く出発する予定だったので、荷物を用意して外に出る。
外はまだ暗く、上空を見上げると、どうやら雲が多いようで、星の姿は殆ど見られない。

東の方はというと、水平線ぎりぎりの部分だけが細長くオレンジ色をしている。
つまり上空にはドバッーと雲が広がっているわけだ。
う〜ん、良い天気はあまり期待できんようだねえ〜

山荘から北側を見ると、本来は北岳が綺麗に見える筈なのだが、
ガスで見えたり見えなかったりの様子だ。
私たちが山荘を後にし、歩き出す頃には暗いことは暗いが、
もうライトは必要ないぐらいになっていた。

山荘を出るとすぐに仙丈ケ岳方面が見えるようになるが、
仙丈ケ岳はまあまあ見ることができた。

東の空を見ながら、日の出は見えるには見えるだろうけど、
出た時だけですぐに雲に隠れるだろうなあ〜と思いながら、
初めて北岳に来た時の翌朝と同じパターンじゃないかあ・・・ と考えてしまう。

初めてここへ来た時、北岳肩ノ小屋の前から迎えた朝も同じような感じだった。
日の出の後、しばらくは良かったが、
すぐに上空の雲の中に太陽が姿を隠し、その後天気は下り坂・・・・・
大樺沢に沿って降るお昼頃には、当然雨となっていたのだ。

どうやら今日も同じパターンのようだね〜
天気予報も、今日は午後から雷雨の予想だし・・・

しばらく歩くと、少し開けた場所があり、隊長がこの辺で待機しようと言うので、
そこで日の出を撮ることにしてザックを降ろし、三脚を広げてカメラの用意をする。
日の出は5時頃なので、まだしばらく時間はある。

後方を見ると、山荘を経て中白峰から間ノ岳への稜線が見えるが、
間ノ岳付近はガスがかかっていて見えない。

そのうち雲の下の方の切れ間がオレンジ色に輝いた。
もうすぐ雲の上端から太陽が顔を出すようだ。
実際に太陽が顔を出し始めると、意外に全部出てしまうまでの時間は短いものだ。

日の出

太陽が僅かに動くだけで
( 雲から顔を出している面積が増えるだけで )
どんどん露出値が変わるので、
日の出の撮影は結構慌しい。

だからフィルム交換なんてしている時間はないのだが、
ふとカウンターを見ると、な〜んとあと2枚で終わりじゃないかあああ〜!

本来ならさっさと終わらせた後、次のフィルムを入れて撮影に備えるのだが、
あまりたいした日の出じゃなさそうなので、日の出の途中で呑気にフィルムを交換する。

太陽はそのうちガスの中へ入っていった。
東側の景色はというと、雲海ともクリアーとも、
何ともいえない中途半端な雰囲気の景色が広がっている。

そのうち急に谷間からガスが沸いてきて、
あっという間に私たちを取り囲み、周囲が何も見えなくなってしまう。
あ〜、今日はこれで終わりかあ〜  あとは雨を待つのみか・・・
という感じになってしまった。

しかししばらくすると、あっという間にガスが晴れてまた遠くまで見えたりしてしまう。
どうやら今日のお天気は気まぐれで、非常に変わりやすい気分屋さんのようである。

山頂に向かってそれなりの勾配の斜面を登っていく。
ちょくちょく後ろを振り返ると、山荘付近はわりとモルゲンロートに
なっているのだが、何故かあまり綺麗ではない。

前方を見上げるとピークが見えるが、実は山頂ではない為、
あそこを山頂だと思って登ると騙されてしまう。

前回の時、見事に騙されてしまったので、
親切心で隊長にも、あそこに見えるのは偽者だと、教えてあげた。

その前衛のピークまで来ると、ようやく先の方に本当の山頂が姿を現す。
登って来る時に上の方を見ていた感じでは、山頂はガスの中で何も見えないだろうと
いう感じがしていたが、どうやら曇り空というだけで、一応周囲は眺められるようだ。
緩い傾斜を歩き詰めると、ようやく今回の目的の山頂に到着する。

山頂には既にたくさんの人たちがいる。
まあ普通に夜明け前に出てくると、こんなもんかな・・・
前回の時は同じ最盛期でも、もっと少なかったような気がするが、
明るくなってから登って来たからかな。
適当な場所に荷物を降ろし、ようやく長時間休憩&朝食タイムとなった。

腰を降ろした場所が東側だったので、正面に鳳凰三山や広河原方面を見ることができる。
しかし相変わらず、ガスによって見えたり見えなかったりを繰り返していた。
でもまあ雨じゃないだけ良いか。

山頂での記念写真は、適当に人が少ない頃を見計らって撮影する。
ちょっと残念だったのは、北側のガスがずっと取れなかった為、
甲斐駒ヶ岳の姿が一度も見えなかったのだ。

どちらかというと、個人的には仙丈ケ岳よりも
甲斐駒ヶ岳の方を隊長には見せてあげたかったのだが・・・

山頂は相変わらず登山人口に比例して、3/4は年配の人たちのようだ。
しかしオバちゃんたちはいつものことだが、周囲を気にすることなく行動してくれる。

山頂で記念写真に写る為に立っていても、
気付かないのか図々しいのか、ずけずけ入って来てくれるのだ。
頼むからもっと周囲の状況に気を使ってくれ−!!
( 本当に素敵な人種だよ、全く〜 )

北岳山頂  3192 m  ( 現在は 3193 m )

隊長殿は一般の登山者とは一味違うルックスの為、
他の登山者たちの記憶に残る事が多いようで、
違う日、違う場所で、いついつどこどこにいましたよね?
と言われることがあるそうだ。

ふと思ったが、山頂で徐に旧日本軍の大きな旗を振り回し、
二百三高地ならぬ、三千百九十二高地〜〜! と叫べば、
ここ数日間は、白峰三山エリアに隊長の噂が広まるのはほぼ間違いないだろう。
いっしょにやれと言われてもやらないが、まちがいなく写真は撮ってあげることだろう。

朝食の弁当も食べ終わり、しばらく呑気に寛いでいると、
随分と若いお姉ちゃんたち ( 山では ) の集団がやって来た。
街中では当たり前のように見られる生き物だが、山中では見かける機会が少ない。

10人ぐらいいて皆同じ恰好をしているのだが、
ズボンが皆さんニッカボッカだったのが印象的だった。
大きな声を出して準備体操なんぞやっていたけど、
きっと大学のクラブかなんかだろうね〜

そろそろいい時間になってきたので、
準備を整えて山頂を後にし、肩ノ小屋へ向かって下山する。

山頂からこちら側へ降りるのは6年振りだが、
周囲がガスでよく見えないせいか、以前とは違う感じがする。

ガラガラの岩の多いコースを降ると、下の方に懐かしい小屋が見えてくる。

北岳肩ノ小屋 ( 3000m )

6年前の6月に、この山に連れて来られ、あの小屋に
泊まったのだけど、その時の山行が梅雨時にも拘らず
快晴のお天気となり、それ以来アルプスクラスの
山歩きに、はまり込むようになったのだ。
一度しか泊まったことはないが、記念の小屋って感じか・・・

小屋や小屋前の広場は変わってないようだったけど、小さな建物が一棟増えていた。
今日はガスに巻かれているから全然景色は駄目だけど、
ここの広場からは仙丈ケ岳や甲斐駒ヶ岳、ちょっと向こうには
北アルプスの山並みが見えるんだよねえ〜〜   晴れていれば。 ( 残念 )

小屋の前でしばらく休んでから出発する。

ここからしばらくは稜線沿いの緩やかな下りだ。
まだ8時台なので、向こうから登ってくる人の姿も少なく、静かな山歩きだ。
こういう曇りでガスに巻かれているような天候の時は
雷鳥が出没しやすいのだが、どうやらいないようだ。

稜線上を降っていくと、小太郎尾根から大樺沢方面へほぼ直角に曲がる地点に
出るのだが、すんなりと迷わず右の方へ降りていけるように登山道が変わっている。
初めて来た時、ここの分岐がよく分からずに、
そのまま左の方へ降りて行こうとして、危うい事があった。

しばらく狭い道を降りていくと、右俣コースと草スベリとの分岐点に出る。
昔は草スベリの方へ降り、随分急な坂だなあ〜と思ったことを思い出した。
草スベリの名前がぴったりなぐらい急な印象が残っている。

私たちは右俣コースを降ったが、ちょっと狭いなあというのが印象的だった。
初めて来た時はここを登りで歩いたのだが、もっと道が広かった印象があったからだ。
6月だったから周囲の草木がまだ成長途中だったのだろうか。
6年で自分がそんなに大きくなっていることはないしね〜

ここのコースも周囲には高山植物がたくさん咲いている。
いろいろな花が咲いていたが、たくさん目にしたのは鳥兜だった。

鳥兜 ( ホソバトリカブトらしい・・・ ほんとかあ? )

あとオオカサモチも多かったような気がする。

鳥兜はいろいろ似たような種類がたくさんあって、間違え易いらしい。
それにしてもここら辺の鳥兜は、やたらと色の濃いものが多かった。

降りながら隊長が言う。      いや〜静かで良いねえ・・・
確かにすれ違う登山者は少なく、聞こえてくるのは、遠くの沢の音と
近くで鳴く鳥の声だけ。   ( 泣き声からすると鶯のようだが・・・ )

静かな中を黙々と降っていると、少し開けた所から下の方にちょっとした広場が見えた。
昔登りの途中で昼食休憩をとった記憶がある場所だ。
6月の時はまだそこも雪渓状態だったのだが、
すっかり雪は影も形もなくなり、単なる岩と草の広場となっていた。

この辺りからは右前方に、昨日八本歯ノコルへ向かって登った左俣コースが見えるのだが、
ここから見ると随分と急な傾斜に見える。  ( なかなかスゲ〜勾配じゃないかあ−!! )
下から見たときは、まだそれほどでもなかったが、やはり対面する斜面の中腹から眺めると、
わりと勾配がよくわかるものだ。

北穂への登りルートを涸沢から眺めても、あまりたいして急には見えないが、
屏風まで行ってから北穂南稜ルートを眺めると、
とんでもない急勾配だということがよくわかる。   同じだねえ〜 ( 笑 )

しばらく広場で休憩してから、再び二俣を目指して歩き出す。
沢の音が大きく聞こえるようになってきたので、おそらくそう長い時間はかからないだろう。
この辺りまで来ると、すれ違いで登ってくる人も増えてきた。

二俣を過ぎてこのルートの登りに入ると、急に勾配がきつくなるので、皆さんきつそうだ。
すれ違った人の中に、どうやらテント泊装備らしきお姉さんがいたのだが、
かなりバテかけているようで、ちょっと心配になってしまった。
いくら二俣からの登りが急になったとはいえ、この辺りであのバテようでは、
果たして無事に肩ノ小屋に到着できるのだろうか・・・ てな雰囲気だったからだ。

今日もこの天気の感じからすると、おそらく昼頃には雨だろうし、
予報でも今日は午後から雷雨の予想だった。
しかしテント泊装備で3000mまで登るのは、結構きついだろうねえ〜
今の私にはできんなあ・・・

二俣の分岐のすぐ手前付近で、何やら顔にポツッと冷たいものを感じる。
いよいよ降ってきたかなと思い、とりあえずレインスーツの下だけを穿くが、
しばらくはまだ降らなかった。

分岐点は混んでいたので、少し下の方へ移動してから、私たちも休憩することにした。
ここではあまり写真を撮るような感じでもないし、
荷物を広げて大々的に飯を食べるような感じでもない。
とりあえず、体を休めるのとちょっとしたお菓子類を口に入れる程度の休憩となった。
がしかし!   ここで、またしても隊長がやってくれた。

隊長は今回の山行で、エネルギー補給の為にブドウ糖を買ったらしいのだが、
どうやら忘れてきてしまったようだったので、適当にチョコレートをあげていた。
だからここでも、チョコレート食う? と言って、
封の空いた袋を差し出したのだが、ここで問題が起きた。

私が買っていたチョコレートは、ブラックチョコとミルクチョコ、ストロベリーチョコの
3種類が入っているものだったのだが、ブラックとミルクは味が薄く、
ストロベリーだけが甘くて味が濃かったのだ。

しかし残念なことに、そのストロベリーだけが何故かダントツで数が少なかったのだ。
だから、結構大事に食べていたにも拘らず、なんとこの鬼軍曹がイチゴイチゴと叫びながら、
差し出した袋の中から貴重なストロベリーチョコを、二つもさらっていったのだ!
( 唖然、呆然、心不全・・・ )

う〜ん、さすがは握力70だけのことはある・・・ がしか−し。
やはりこれも軍法会議ものじゃあ〜〜!

休憩を終えて、樹林帯に向かって歩き出すと、
しばらくしてから、さすがに小雨が降り始めた。

樹林帯がすぐだったので、とりあえず樹林の中に入ると、
殆ど雨の影響は受けない程度の小降りだった。
しかし10〜15分ぐらいだろうか、とうとう雨が本降りとなり始め、
レインスーツを着る羽目になってしまった。

あまり考えてなかったが、
この沢沿いのたいしたことのない道も、雨となるとちょっと面倒だ。
結構、滑りやすい箇所も多く、急斜面になる箇所もちょくちょく出てくる。

しばらくは蒸して暑いなあ〜ぐらいのことを考えながら歩いていたが、
沢の右岸の入ってしばらくの頃に、大事な事を忘れていたことに気がついた。

雨の時にザックカバーをかけるのは当然だが、あれはカバーを一枚しただけでは、
本降りの雨にはあまり効果が無く、中身が濡れてしまうということだった。
実はいつも一眼レフカメラはザックの天蓋部分に収納するので、今もそうなったままなのだ。

昨年、南アルプス南部を縦走した時、強い雨の中を半日、ザックカバーだけで歩いたら、
樹林帯の中だったにも拘らず、中の物がずぶ濡れになってしまい、
一眼レフカメラを入院させる羽目になってしまったのだった。

とりあえず、ちょっと雨が弱くなる辺りでザックを降ろし、
急いで本体のビニールの内側に収納する。
一安心し、再び歩き出す。

再度沢を渡り、崩壊地を通過して樹林帯に入る。
樹林帯の中の登山道も、それなりに水量が増えており、ちょっと歩きにくくなっていた。

そのうち雨が本格的になり、
落ちてくる雨粒が大きくなったということが実感でわかるようになった。
やっぱレインスーツでの歩きは蒸すなあ・・・ などと思いながら歩いていたが、
そのうちちょっと心配になったことが頭に浮かんだ。

カメラはビニール内に収納したが、他に何か濡れるとまずいものは
無かったかな〜と考えていたらあったのだ、電子機器が〜    携帯電話だ。

ちょっとまずいなあ〜、とは思ったものの、今更またしても収納替えは面倒だ。
この大雨だしい〜    多少濡れても大丈夫そうなものが上に乗っているから、
たぶん大丈夫だろう・・・      そう思うことにして進む。

上空では雷がゴロゴロ鳴り出している。
足も痛て−な−と思いながら降って行くと、ようやく白根御池小屋との分岐点まで来た。

ここまで来れば、広河原はもうすぐだ。
13時のバスの時間には完全に余裕で間に合う。  良かった。
しかし本当のゴールまでは、思ったよりはちょっと長かった。

それにしても、もうお昼なのに、
今頃ここから登り始めている人たちがいるというのは、どういうことだろう?
時間的に稜線上の小屋まではちょっと無理だろうから、白根御池小屋へ行く人たちだろう。

アルペンプラザに行くと、ツアーの団体がたくさんいて、どうやらこれから歩き出すらしい。
バスのチケットを買いに窓口に行くと、車内販売だという。
隊長はしばらく荷物の整理をするというので、私は先にバス停へと向かった。

乗る予定のバスは13時発の便なので、まだ25分ぐらいあるのだが、
座れないのも困るので、雨の中、立って待つつもりでバス停に行くと、臨時便らしき
バスがまだ停車しており、座れなくても良いならこれに乗ってくださいと言われた。

しかし隊長を置いて行くわけにはいかないし、座れないのも疲れるので、当然断って待つ。
そのうちだんだん待ち人が増えて行列となり、
私たちは無事次のバスに一番に乗ることができたのだった。

動いていた時はあまり感じなかったが、バスに乗って静かにしていると、これが結構寒い。
雨でTシャツがかなり濡れている上から、濡れたレインスーツが直に腕に接触しており、
これが結構長時間となると、体が冷えてくるのだ。

下山して疲れているし体も冷えてくるので、早く芦安の駐車場に着いてほしいのだが、
どうやら途中で前の方に乗っていた子供が車酔いを起こし、吐いてしまったらしい。

夜叉神でしばらく停車したが、そのうちようやく出発し、
いい加減疲れた頃にやっと駐車場に到着した。

バスを降りると、車はすぐ近くの場所に駐車してあったが、
とりあえず横のベンチで荷物を降ろす。
隊長が荷物を広げて整理していると、何やら急に雄叫びが上がった。

『 ブドウ糖があったああああ〜〜〜!!   ( ドッカ〜〜〜〜ン ) 』

荷物のどっかに隠れていたらしい。  ご愁傷様・・・・・   ま、そういうこともあるさ。

車に戻り、荷物を置いてから、温泉に入りに行く。
バス停前の南アルプス温泉ロッジかと思っていたら、
日帰り客用は向かい側の白峰会館のお風呂だった。

自販機で入浴券を買って入っていくと、
誰もいなくてそのままお風呂場まで進んでしまった。
( チケットいらないじゃん・・・   でもそれは無銭入浴か )

下山後のお風呂は確かに気持ち良いのだが、
湯船に結構垢が浮いていたのは、ちょっとねえ〜

下山中に横着してレインスーツの下を穿いてなかった隊長のズボンはズブ濡れだった為、
風呂から出ると、隊長はひたすらドライヤーでズボンを乾かしている。
( お疲れ様で〜す。 笑 )
その後、腹が減っていたこともあり、食堂に移動して、適当に何か食べることにした。

食堂はガラガラに空いており、壁には山の写真がたくさん飾ってあった。
素晴らしい晴天下での北岳の写真が目を引く。
晴れていればあんなに綺麗な景色なんだねえ〜
白峰会館を後にし、駐車場で荷物の整理を済ませると、私たちは帰途に着いた。

隊長の荷物が重い為、これで新宿から電車に乗るのはいやだということで、
途中でコンビニに寄り、荷物を一部宅配で送ることにする。
来る時に寄ったコンビニで、荷物を出すついでに買い物をする。

レジに行くと、先にレジを済ませた隊長が、フランクフルト勧められるよと言う。
確かに精算中、レジのお姉さんに、
フランクフルトはいかがですか〜と言われるが、不要なので私は断った。
しかし、ふと隊長を見ると、しっかりその手にはフランクフルトがあるじゃないかあ〜

隊長がお姉さんに色気づいた意外な一面を見てしまった。

しかし、普段のトレーニングのおかげか、
特に鼻の下の筋肉が伸びているような気配はなかったようだ。

コンビニを出るとすぐに中央道へと入る。
どうやら東京に近い付近では毎度のごとく混んでいるようだ。
山の方だから雷雨だったのかと思っていたが、どうやら東京の方も
今日はぐずついた天気だったらしく、途中から雨が降り出す。

談合坂が混んでいるようなので、外して別の所に入った。 ( 初狩だったと思う )
既にこの辺では本降りの雨となっており、すぐ目の前の山にガンガン落雷していた。
中には思わず、頭を隠そうとしてしまうぐらいの大きな落雷もあり、ちょっとびっくりである。
しかしこの辺は山の中なので、いつも天気が良くないことが多い。

荷物が少なくなったとはいえ、混んでいる埼京線は大変らしく、
隊長は西船橋まで来て武蔵野線で帰るという。

首都高速を走っていると、都心の方は雨は降っておらず、
土曜日のせいか花火が上がっていた。

西船橋で晩飯食って別れたが、
隊長が女の話を気合入れて話していたのは、ちょっとびっくりだった。
( 隊長、こんなによくしゃべったっけか? )

その後、2〜3日はしっかり筋肉痛で脚が痛くなってしまった。
出来上がった写真に良いものが全然無かったのはちょっとショックだったが、
まあ久しぶりに山歩きが出来て良かった。

あとは秋に一度ぐらい行ければ良いかなと思うが、兎に角晴れた写真が撮りたいものだ。

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