2002/10

北アルプス

涸沢

ついに山岳紅葉最盛期の季節がやってきた。
夏山の瑞々しい雄大な山岳景観も素晴らしいが、秋の山岳紅葉もそれと肩を並べるほど、
いやそれ以上に美しく、山が人の心を洗い流すような素晴らしい顔色を見せる季節。

10月に入り、山岳紅葉の最盛期には写真を撮りに出かけることは決めていたものの、
具体的にここという場所も思いつかず、何となく涸沢にでも行こうかと考えていた第1週。

お天気の予想も台風の通過に伴い、しばらくの間は高気圧圏内で晴天に恵まれる様子。
仕事の状況から木曜日は休めず、また土曜日が全国的に一番良い天気になりそうだと
いうことから、当初の予定通りに金曜土曜で涸沢に出かけることになった。

前日までに用意がきちんと出来ていなかった為、
当然のことながら出発当日は早く帰って用意をしなくてはならない。
午後休も取れなかったので、フレックスを駆使して16時半頃にいそいそと退社する。

一昔前にSKIブームを巻き起こした、
あの 『 私をスキーに連れてって 』 の映画の、三上君のシーンが頭に浮かぶ・・・
SKIに出発する日の夕方は、仕事もそこそこに上司に見つからないよう、隠れて
抜け出すように会社から帰る彼の姿は、当時スキーヤーの鏡だと言われていた。

私も隠れるまではしないが、少しは周りの目を気にしながら、
しかしめげることなく、とっとと帰る。   山はお天気が命!

自然が人間の都合に合わせて、天気を融通してくれることはないのだから、
人間の方が自然の都合に合わせるべきである。

平日休んでしまえば、また山に行っているよ・・・ という職場の人間たちの評価は、
散々な山行だろうと素晴らしい山行だろうと関係なく、変わりゃ−せんのである。

10/03 (木)  千葉 → 中央高速 → 松本 → 沢渡
10/04 (金)  沢渡 → 上高地 → 横尾 → 涸沢( テント泊 )
10/05 (土)  涸沢 → 横尾 → 上高地 → 沢渡 → 千葉

10月 03日 (木)     天気は忘れた

18時過ぎ頃家へ戻ると、そそくさと荷物の準備を始める。
今回は1年ぶりにテントを山へ連れて行くので、久しぶりにザックがでかくなった。
出発が予定時間より遅れていたので、
久しぶりの重さと大きさにじっくり向き合う暇も無く、19時50分頃スタートした。

20時頃に京葉道路に乗るが、かなり空いていていい速度が出せる。
問題はいつも首都高速の都心部なので、今日はどうかなあなどと考えながら、
首都高速をしばらく走っていると、錦糸町の料金所の手前で、渋滞等の道路状況を
表示する電光掲示板が現れ、見るとどこも渋滞箇所がない!  やった、ラッキ−!!

さすが休前日でないと空いてるよな〜と感動しながら、いつもより速いスピードで走っていく。
中央高速に入ると更に空き具合が増す。

給油の為に双葉SAに寄ると、スタンドのおっちゃんが話しかけてきたので、
上高地へ行くと答えると、この前もいらしてましたよね− という返事・・・
はて、なんで覚えているんだろう・・・・・  夜勤で客が少ないからだろうか???
後部座席のザックが目についたらしいのだが、この人も登山者なんだろうかね〜?

このままガンガン飛ばして行ければ、かなり早い時間に沢渡に着くことになるのだが、
そうは問屋が卸さないのである。  どこぞの馬鹿たれが、車が横転するほどの
事故を起こしたせいで、諏訪ICの先が通行止めになっていたのだった・・・・・

しっかり諏訪ICで下道に降ろされ、しばらく国道20号線を進む羽目になるのだが、ただでさえ
高速を降りてきた車で混雑するのに、なんとふざけたことに道路工事のオンパレード・・・・・
結局、一つ先の岡谷ICから高速道路に戻ったが、このハプニングのせいで40分程の時間ロス。

松本から先の国道158号線はかなり空いていて、0時10分頃に沢渡地区に到着出来たが、
ここでまたしてもハプニングと対面してしまった。   沢渡の駐車場は全部で6箇所あり、
最近はずっと沢渡上に車を置いて、翌朝すぐに目の前からバスに乗るというパターンだった。

しかし今回は沢渡上が満車だったので、一番の上の ちゃあらし とかいう駐車場に行ったら、
ガラガラだったのはいいが、ライトが明る過ぎて寝られんじゃないか−

ということで今度はまた下って来て、沢渡岩見平に車を置いた。
入る時に入り口の看板に、ここは営業してません、と書いてあったのがちょっと不審だったが、
他にもそれなりに車が駐車してあったし、まあいいかと思ってそこで一晩過ごしてしまった。
しかしこれが間違いだった。

上空には星がたくさん出ていて、良い天気だなあと感じさせられるのはいいが、やたら寒い!
家を出てすぐに毛布を入れるのを忘れたと気づいたのだが、遅れていたので戻らなかった。
そのツケが廻ってきて、寒くて何度も目が覚める・・・ というか寝られへん。
何度か時計を見ていたが、4時40分頃になったので準備を始めることにした。

10月 04日 (金)     晴れ 後ち 曇り

周囲も薄ら明るくなりだし、周りでも活動し始める人の姿も見え始めた。
この時期は夏に比べて日の出が遅いので、駐車場の管理人が来るのが遅くても
おかしくはないと思っていたが、一向にその気配がない。

5時半頃になってアルピコのバスが目の前を走っていくようになっても、
全然状況は変わらない・・・   これはまずい! と思って、さっさと一番下の
沢渡駐車場へ移動したが、既にバス停には長い列が出来ていた。

チケットを買って並んだが、次のバスにはあと2人というところで乗れなかった。
今回はちょっと勉強になってしまった。
営業してないって書いてあるのだから対応すべきだったねぇ。

上高地BTでバスを降り、支度を整えていざ出発という時に、またしてもハプニング。
ウエストベルトのところに、ペットボトル用のミニザックを着けていたのだが、
接続部分が切れてしまい、仕方がないので応急処置的にショルダーベルトに着けて歩き出す。

BTのスタートが7時を過ぎていたので、少し急いだ方がいいかな等と考えるが、
久しぶりのテント泊の荷物なので、そうそう速く歩けるわけもなく・・・
しかし、結構いつものようなペースで歩いていたように思う。
事実、徳沢まで1時間15分程で着いた。

徳沢ではしばらく休んで朝御飯タイム。   お腹も空いていたので、ちょうど良かった。

ここのテント場の一番北側の大きな木は、秋になるといつも全ての葉が黄色に変わるのだが、
今回はまだ少し早かったようで、色づきがちょっと足りなかったような気がする。
黄色は黄色なんだけど、どうも映え方が足りないような感じかなあ・・・・・

徳沢を出て横尾へ向かう。
この区間まではまだ勾配が殆どないので、荷物の重さも気にならずに済む。
すたすたと歩き、50分程で横尾に到着。

時間が遅めなので、結構たくさんの登山客で賑わっていた。
ちょっと休んでお菓子などをつまみながら屏風岩の方を見上げるが、
そんなにたいして色付いているようにも見えない。

本当に涸沢は、ネットで見たように激しく紅葉しているのだろうかと思ってしまう。
そのうち前を、若いお姉さんの二人連れが通って行ったが、
周囲が年配者だらけのせいか妙に新鮮で、渋谷にでもいそうな感じの印象。
そんな感じの女性でも山に登るんだなあと思ってしまった。

9時50分頃、横尾を出て涸沢ルートに入る。
左側には屏風岩が聳えているが、霞んでいて薄く見える。
しばらくゴロゴロした歩きづらい道を進むと、ようやく登りが少しづつ始まるが、
ここからは樹林帯に入る為、涼しくてよろしい。

しかし夏とは違って、少しではあるがやはり周囲が黄色に近くなっている。
道はそんなに混んでいるわけでもなく、どんどん歩いて行くことができ、
ほどなく本谷橋に到着すると、そこにはかなりの休憩客がいた。

吊り橋は一度に通れる人が少ない為か、沢に直接木の板が架けられて、道が出来ていた。
休みながら、さてさてこれからが登りだけどテント泊の荷物での久しぶりの登りだなあと考える。
( 別に考えたからといって、軽くなるわけではないんだけどね− )

本谷橋を出て登り始めると、ここからは結構周囲の木々が黄色っぽく色付いていた。
沢を挟んだ対岸の斜面もなかなか色づいていて随分綺麗なのだが、
残念なことに上空には雲が沸いていて、陽が射したり陰ったりしている。

1時間もしないうちに向こうの方に涸沢の姿が少しづつ見えてくるのだが、涸沢の方は完全に
曇り空となっていて、紅葉そのものはかなり綺麗であるにもかかわらず、全く映えていない。

Sガレ付近からは涸沢の紅葉が見えてくるので、写真の一枚でも撮りたいところだが、
太陽光を浴びてない為、写真的には全然話にならない・・・
本谷橋付近から東の方は陽射しがあって、常念山脈は明るく晴れているのが見える。

涸沢直下の少し開けた所まで来ると、周囲の色づきがかなり綺麗だということを
実感するのだが、誠に勿体無いこの日陰の状況・・・・・
まあ ”明日があるさ” と頭では考えるものの( 歌ってはいない )、ちょっと悔しいものがある。

登って来た時、きつくても目の前に広がる素晴らしい紅葉の海に感動し、今までの苦労も
あっという間にぶっ飛んでしまうというプランも、涸沢の醍醐味の一つだと思うんだけどねえ−

と言っててもしょうがないので、さっさとテント場へ向かい、適当な場所を探す。
思っていたほどテントの数は多くなかった。   これから増えるのか、土曜じゃないから
こんなものなのかはわからんが、まあいろいろ好きな場所を探せるのは結構なことである。

3年前の秋に来た時は土曜日だったにもかかわらず、夕方遅めの時間に着いてしまった為、
テント場が結構いっぱいで、狭い場所に無理やり張ることになって大変だった事を思い出す。

1年ぶりのテント設営、相変わらず雨に当たらないのは幸いだが、
今日は風が結構吹いていて時折り物が飛びそうになる。
ここはテントがたくさん張れるのはいいのだが、
岩だらけの場所なので、なかなか綺麗な整地にはならない。

設営した後、中に入ってみると、改めて結構デコボコだったことがわかるが、
まあしょ−がない・・・     だって今さら動かせん。

一通りの作業を終わると、当然ビールを飲むところであるが、なんせ今日は風が強くて寒い。
今回は珍しく焼酎を持ってきたのでお湯割りも考えたが、風が強いのであまりガスを使う気にも
ならず、どうせおでんを食べるのだからビールでいいかと思い、パノラマ売店に向かう。

平日とはいってもさすがは紅葉最盛期、寒いにもかかわらずたくさんの客で賑わっていたが、
屋根の上のテーブルの席は、風が強いせいかやや空いていた。
ここでおでんと生ビールを頂いたが、寒くていまいちだった。

う〜ん、折角の数年ぶりのおでんなのになぁ・・・
しかし陽射しが無いだけでこんなに寒いんだねえ−
4枚着ていたが、なかなか震えることしばしば状態だった。

食べ終わると、この寒さだし一人でもあるので、テントへ戻って少し暖まることに決めて、
シュラフの中にもぐりこみ、しばらく昼寝をすることにした。

しばらくウトウトしたらしく、時計を見ると17時半。  まだ暗くなっておらず、夕食タイム
にはちょうどいいのだが、どうにも腹がへってないので、そのままウダウダしてしまう。

結局、すっかり真っ暗になった19時前頃になって、ようやくカップラーメンでも食べることに
して用意を始める。  外は相変わらず風が強かったので、久しぶりにテントの中で火を使う。

ストーブセットも出しているし、折角焼酎を持って来たのだから、飲むなら今しかないなぁと
思い、お湯割りにしてしばらく飲んでいると、ちょっとフワ〜っとした、いい酔い加減に・・・・・

近くのテントからは学生らしき男女のパーティーの賑やかな声が絶えず聞こえていたが、
いつの間にかそれも聞こえなくなり、静かな夜へと変わっていった。

暗くして寝に入ったのは21時半から22時頃だったと思ったが、ふと気がつくと先ほどの
若者たちの、星が綺麗だという話声が聞こえるので、しばらくしてから外を覗いて見ると、
確かに星は少し見えていたものの、全体には雲が覆っており、あまり良い天気ではない様子・・・

天気予報では明日は晴天予想だったが、本当に晴れるのか疑惑の残る怪しい空模様だ。
( 晴れてくれないと、何しにここまで来たのかわからないので晴れますよ−に・・・ アーメン )
そういう心境で、本格的なお休みモードに入るのであった。

10月 05日 (土)     快晴

夜中にふと目が覚めると、テントをバチバチとたたく音が聞こえる。
どうやら雨が降っているようだ。
たいした雨ではなさそうだな・・・ と思いながらもまたウトウトして眠りに入る。
そして明け方近く ( たぶん早朝だと思う ) にも、やはり雨がテントを軽くたたいていた。

次に意識がはっきりした頃には、外からある程度の活動感のする音が耳に入って来た。
朝御飯は米を食べる予定だったので時間もかかることだし、水の補給にも行かなくては
ならないことから、珍しく短時間でシュラフから出て、きちんと起きてしまった。

テントの外を見ると雨は降っていないものの、上空には雲が広がっていて、どんよりと
した光景が広がっている。 穂高連峰の稜線もガスに包まれていて見えないのである。

ガチョ−ン・・・・・   おいおい、なんだよ−この天気は−!?
と思ってみたところでどうにもならず・・・・・
というかまだ起きたばっかで頭がよく、回ってないらしい。
とりあえず支度して水の補給へとヒュッテの方へ向かって行った。

ヒュッテのパノラマ売店付近は、モルゲンロートを期待する人たちでかなり賑わっていた。

トイレと水の補給を済ませてテントに戻り、
朝食の準備及び撮影の支度、シュラフの片付けなどを行っていく。
東の空を見ると、そちらの方はどうやら雲はあるものの、
青空らしき空模様の様相を見ることができ、そう悪い天気でもなさそうに思えてくる。

そうこうしているうちに、だんだん穂高上空の雲も少しずつではあるが、
雲量が減り始めてとうとう稜線上のガスにも切れ目ができ始めた。
涸沢と稜線とのちょうど真ん中ぐらいから
上は太陽光を浴びて、薄くはあるがモルゲンロートっぽくなっていた。


朝飯を食べながら涸沢槍の方を眺めると、
光と影の境目のラインが下がってくるのがわかる。

朝飯を済ませて一息つく頃には、光の部分が涸沢小屋の下の方までに
降りてきていたので、涸沢小屋の左側の紅葉一帯の撮影に行ってみたが、
こちらもあっちこっちに、カメラや三脚を抱えた人の姿がたくさん見られた。

この頃には既に稜線上のガスもとれ、最後まで隠れていた
奥穂高岳の姿も見えるようになっており、すっかり撮影に熱中してしまった。

三脚をフルに担いで歩き回るのも久しぶりのような気がするなぁ・・・



1時間ぐらいしただろうか、
その後今度はテント場の下の方へと移動して、また撮影に熱中する。

こちらもかなりの色づきをしている。
特に一番手前のナナガマドはかなり赤くなっていた。
こちらは北穂からの斜面に沿っているので、北穂とセットにして写す写真が多くなった。

しっかし、それにしてもナナカマドはほんとに真っ赤な色やなあ−と、しみじみ思ってしまう・・・
こちらからヒュッテの方を眺めるとオレンジ系の色が目立つが、
北穂側のすぐ近くのエリアは、赤、黄、緑、それぞれが濃い色合いを織り成しており、
また密集していることも、綺麗な景観を作りだす要因になっていた。



涸沢ヒュッテと涸沢小屋との分岐の地点付近まで降りて来ていたが、
それより下に降りるかどうかちょっと迷ってしまった。

この下の開けてるエリアまでの間にも、かなり綺麗な紅葉が広がっているのだが、
さすがに時間の方も9時を回っていたので、
そろそろテントの片付けをすることに決めて、テントの所へ戻り、出発の準備を始める。

一通りの準備が整っていよいよ降りるのかと思うと、
なんともここからの涸沢槍と紅葉のセットの光景が名残り惜しい・・・・・

しかし、いつまでも居るわけにも行かないので、
9時50分頃にテント場を後にして歩き始めるのだった。



テント場を降りて行くと、ヒュッテと小屋との分岐点にすぐ出るのだが、
この付近もなかなかの眺めで、相変わらず三脚とカメラがよく働く。

ここからしばらく降りた付近にちょっと開けた感じの所があって、
そこまではずっと真っ赤に染まったナナカマドが続いている。

右に左にとレンズを向けながら、下の開けた場所まではずっと撮影が続いてしまう・・・・・
というよりも、この光景を見ると撮らずにはいられないという方が正しいかもしれない。



ネットで事前に記事を読んだ時には、黄色が綺麗で十年に一度の黄葉かもしれないと
いうことだったが、確かに黄色はいつもよりちょっと綺麗な感じにも思える。

しかし黄色に限った話ではなく、やはりこの涸沢全体を包むような紅葉の海が、
凄い勢いで私たち登山者を圧倒するのであり、ただだまってそこに立っているだけで、
自然とそういう気にさせてくれるのがまたここの凄さだろう。

自然はいちいち言葉で説明はしないが、何も言わずにその場で態度で示してくれるのだ。
なんだか作家のような言い回しになってしまったような気もするが、ほんとにそんな感じがする。

開けたエリアを降り始めると、いよいよ涸沢の風景とも本当にお別れになってしまうので、
最後は何度もカールを振り返り、この光景が見れるのもとうとう終わりかとがっかりしてしまう・・・
しかしいつまでも居られないのでとうとう降り始めて、涸沢ともお別れとなってしまった。

登山にグレードアップして2〜3年のうちは、百名山のピークの方に目を奪われて、
涸沢なんてろくに景色も( 遠くまで見渡せる景色も )見えないのに、何がそんなに良いのか
よく分からなかったが、最近では確かにここは良い所ではあるなあと思えるようになった。

しかし前回夏場に来た時はそこまでは感じなかった為、
やはりこの紅葉の素晴らしさが効いているのだろう。
事実、なぜか毎年ここには必ず来ているんだなあ−、これが。 ( それも秋ばっかりねえ〜 )


いよいよ涸沢の素晴らしい紅葉の景観とも別れて降りにかかるのだが、
時計を見ると、もうちょっとで11時になろうとしていたのだ。

いくらなんでも今日帰るのならば、そろそろ降りて行かないとね・・・

ということで降り始めたが、南岳方面が正面に見えるあたりまでは、
何かと紅葉が綺麗なもんでついつい撮影してしまう。
しかしそこを過ぎると一気に紅葉の景観も無くなってくるので、ようやく降りが本格化する。

真面目に降り始めるとこのルートは結構早いけど、本日は紅葉最盛期の土曜日だ。
ぞくぞくと登ってくる登山者がいるわいるわ・・・  中には40〜50人もいようかというほどの
ツアー団体もいたのであった。 ( これじゃ−、今日の涸沢の山小屋は大変だろうなあ・・・ )

降りで前を歩いていたおじさんはこの団体に嫌気がさしているようで、団体とすれ違いになって
待たされる度に団体客に向かって、山は一人の方が良いぞと説教じみたことを言っていた。
( 確かに山での団体客の問題を考えると、そう言いたくなるのはよく分かるよ、おっちゃん )


ぞくぞくと登って来る登山者とすれ違いながら更に降りて行くと、
下の方に沢が見え始めて、本谷橋が近付いてきたことが分かる。

この辺りまで降りて来ると周囲は半分ぐらい、まだ緑色をしている。
本谷橋に着くと、相変わらずたくさんの登山客が休憩おり、その中に交じって自分も休憩する。

朝からフリーズドライの御飯を一つ食べただけだったので、お腹も空いていてちょうど良かった。

ここから涸沢は見えないが、上空を見上げると青空が広がっていて、
この時間でも昨日のような曇り空にはなっていないらしい。
おそらく今日は午後でも陽を浴びた綺麗な紅葉が見られるのだろう。

今日は吊り橋を渡らずに、沢に渡してある小さな木道を歩いて対岸に渡り、本谷橋を後にする。
ここを出るのが12時半過ぎなので、上高地には16時頃までには着くだろう。

ここから先のルートではそうそう写真も撮らないだろうから、
三脚も片付けてカメラだけ手に持って歩く。

本谷橋よりも下の方では周囲は殆ど緑の樹林帯であるが、
たま〜にポツンと真っ赤な木も見られる。

横尾までの道のりも後半になると、すれ違う登山者の数が減ってくる。
しかし横尾大橋の近くの平坦な道付近でも1時半頃だったが、
まだこれから涸沢へ向かう人たちもチラホラいた。

横尾では休憩せず、そのまま徳沢まで続けて歩くことにして、横尾を後にする。
ここからは車も走れる林道になるので、歩きは格段に楽になるが、
上高地までは11km あるので、そんなにすぐに着くわけではない。

徳沢には14時過ぎ頃に到着して休憩タイムにする。
久しぶりにテント泊の荷物を担いだせいで、首から肩にかけてちょっと痛くなってしまった。
20分程休んでから14時半前に徳沢を出発。

途中の明神は飛ばして、一気に上高地まで向かうつもりで歩き出す。
この辺のアルプス街道では、午後のこんな時間でも
まだ上高地方面からやってくる登山者の姿をそれなりに目にすることができる。
おそらく横尾山荘や槍沢ロッジまで行く人たちだろう。

徳本峠との分岐を過ぎて明神館の前に来ると予想通り、一般観光客の数がどっと増える。
毎度のことではあるが、ここから先は観光周遊コースになっている為、
普通の格好の人や何も担いでいない人たちと、たくさんすれ違い、また追い越していく。

明神から30分足らずぐらいで、右手の林の中に建物がチラチラと見え始め、
小梨平のキャンプ場に着いたことが分かる。

しばらく進んでキャンプ場の中の道を歩いていると、
親子連れの猿たちが、あちらこちらでウロウロしている・・・
テント張っている人たちは猿には襲われないのかな?

そのそばでは観光客たちが、猿だ猿だとギャ−ギャ−騒いでいるが、
猿ってそんなに珍しいのだろうか・・・

そしていつものお決まりのパターンで、
河童橋から穂高連峰の写真を撮ってBTへと向かう。

沢渡行きのバスの所まで来ると、結構人が並んでいた。
今まで沢渡行きのバスは殆ど並んだことがなかったので、
何も考えずに列の後ろの方へ向かい始めて驚いた。

バス待ちの人の列は、バス停から売店の前、
更に郵便局の前を過ぎて、裏手のアスファルト道路の所まで続いていたのである。
ひえぇぇぇぇ!   なんじゃ、こりゃぁぁぁぁ−!!  っという感じだ。
人数にすると、おそらく300人から350人ぐらいって感じだろうか。

隣は松本行きのバス待ちの列みたいだったが、
そちらも郵便局前ぐらいまでずっと列が出来ていた。

日曜じゃなく土曜だからとあまり考えてなかったのだが、さすがは秋の行楽シーズンだ。
1時間近く並んだ挙句にやっとバスに乗れたが、予想外の事態はこの後にも控えていた。

バスは客がたくさん待っているので、客が全員乗り込むとすぐに発車して走り始めた。

しかしこのバスの座席は狭い為、頭より高くなるようなでかいザックは横にも置けず、
仕方ないので膝の上に載せていたのだが、まあ30分弱ぐらいだからいいやと思っていたら、
これがなんと渋滞なのか信号待ちなのかは分からんが、頻繁にバスが止まってしまうのである。
結局辛い状態のまま、なんと沢渡に着いたのは、1時間ぐらいしてからだった。
( あ−疲れたよ、全くね−! )

その後いつもの温泉へ寄ったが、
いつもは2〜3人ぐらいしか入っていないここの風呂も、この日はたくさん人がいた。
狭く感じる程の人数ではないが、ちょっと珍しい感じだった。

腹が減っていたのでここで何か食べられないかと思ったが、時間が遅かったせいか
メニューが無くなっていたので、まあいいかと思い温泉を後にした。

帰りの国道158号線はかなり渋滞していて、ずっとノロノロ運転が続いた。
松本付近まで平均すると、15〜20km/h という感じだったような気がする・・・

しかし高速道路に乗ると一気にガラガラとなり、
今までの時間の損失を取り戻すような高速運転となった。

首都高速も時間が遅めだったせいか、わりと流れていて、
23時過ぎ頃には無事帰り着くことが出来た。

翌日、出来上がった写真を見たところ、色はこれ以上ないという程の鮮やかさなのだが、
これだっ!という、いい写真があまり無かったのがちょっと残念だった。

撮影の時間はたっぷりとあったのだが、あまりにも紅葉が美しくてたぶん、
集中力が少し低下していたのかもしれない。
それぐらい綺麗だったのだから、良いと言えば良いのだけどねぇ。

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